「放射線技師はやめとけ」って本当?
ネットで検索すると、こんな声がたくさん出てきて不安になりますよね。
- 求人が少なくて転職できないらしい
- 年収が低くて将来が不安
- 被ばくのリスクが怖い
結論からお伝えすると、放射線技師(正式名称:診療放射線技師)は「やめとけ」と一括りにできる職業ではないです。
ただし、知らずに飛び込むと後悔するポイントがあるのも事実。私自身、総合病院で17年間働き、放射線治療を11年間担当しました。
朝7時から夜21時まで病院にいる日々の中で、「もっと早く知っておきたかった」と思うことがいくつもあったんです。
この記事では、17年間のリアルな経験をもとに「やめとけ」と言われる理由を一つずつ検証していきます。
- 「やめとけ」と言われる5つの理由は、どこまで本当なのか
- 17年働いた元技師が感じた、放射線技師ならではの強み
- 「辞めるべきか続けるべきか」を判断するための具体的な基準
「やめとけ」の5つの理由を元技師が検証

「やめとけ」の声には、的を射ているものと誤解に基づくものが混在しています。
17年の経験をもとに、代表的な5つの理由を一つずつ検証していきます。
求人が少なく転職しにくい
「やめとけ」の理由で最も多いのが、求人の少なさです。
厚生労働省の「jobtag」によると、診療放射線技師の有効求人倍率は約1.12倍。看護師や薬剤師など他の医療職と比べると低い数字です。
地域によっては1倍を下回るエリアもあります。これは事実です。ただし、「求人がない」のではなく「見つけにくい」というのが正確な表現になります。
くろぶち求人自体はあるんです。ただ、条件のよい病院の求人はなかなか出ないのが現実です。
私がいた総合病院では、毎年数名のスタッフを採用していました。
ただ、もっと条件のよい病院の求人となると話は別。誰かが辞めたときにしか出ないので、数年間チャンスがないこともあります。
一方で、第1種放射線取扱主任者の資格を持っていた同僚は、大手の医療機器メーカーに転職していきました。放射線技師に特化した転職サイトを使えば、見える求人数はまったく違ってきます。
平均年収550万でも「昇給しない」不満は本物
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、診療放射線技師の平均年収は約550万円(平均年齢40歳・勤続13年)。
全職種平均の約527万円より高く、コメディカルの中でも薬剤師に次ぐ水準です。
| 項目 | 診療放射線技師 | 看護師 | 臨床検査技師 | 薬剤師 |
|---|---|---|---|---|
| 平均年収 | 約550万円 | 約508万円 | 約496万円 | 約584万円 |
| 平均年齢 | 40.0歳 | 40.7歳 | 39.5歳 | 41.2歳 |
数字だけ見れば「十分じゃないか」と感じるかもしれません。
でも、統計の「平均550万円」と現場の実感には大きな開きがあります。



何より不満だったのは昇給の少なさ。10年以上働いても基本給は新人と大差なかったです。
放射線治療にフルタイムで入っていた頃の手取りは月25万円前後。
毎日朝早くから夜遅くまで働いた月は手取り30万円を超えたこともありますが、そんな働き方を毎月続けたら体がもちません。
平均550万という数字は当直手当や時間外手当込みの結果なので、その分体を削っている実感がありました。
一方で、資格手当については不満はなかったです。第1種放射線取扱主任者の資格で月5,000円以上の手当がついていました。
ただ、病院によってはもっと低いケースもあると聞くので、ここは職場次第のところが大きいです。
体力・精神面のきつさは本物
放射線技師の仕事は、レントゲンやCTの撮影だけではないです。
病院の規模によっては、以下のような幅広い業務を担当することになります。
- MRI・マンモグラフィ・超音波検査
- 放射線治療・核医学検査
- 時間外の緊急対応
「定時で帰れる日はほとんどない」という職場は珍しくないです。



ストレスで頭が真っ白になり、手が震えた時期がありました。もっと早く環境を変えるべきだった。
放射線治療を担当していた時期、スタッフが減ったときは特にきつかったです。毎朝7時過ぎに出勤して、帰りは21時を過ぎるのがほとんど。
放射線治療は1日の患者数が決まっていて予約が詰まっているため、「今日は早く帰ろう」が通用しないんです。
ミスが患者さんの健康に直結する以上、精神的なプレッシャーも常にかかります。
ただし、これは「放射線技師という職業」のきつさなのか、「その職場」のきつさなのかは分けて考える必要があります。
被ばくリスクはほぼ誤解
「放射線」という言葉から、健康被害を心配する声はよく聞きます。ただ、これは「やめとけ」の理由の中で最も誤解が大きいポイントです。
放射線技師が業務中に受ける年間の実効線量は、約0.8ミリシーベルト。自然界から毎年受ける被ばく量(約2.1ミリシーベルト)よりもずっと低い値です。
防護衣の着用、撮影室の遮蔽設計、個人線量計(ガラスバッジ)による管理など、対策は何重にも講じられています。特に放射線治療では高エネルギーの放射線を使うため、遮蔽はさらに厳重です。



放射線治療の専任になってからは、ガラスバッジの結果がいつも0ミリシーベルトでした。
「被ばくが怖いから」という理由だけでこの職業を避けるのはもったいないと思いますよ。
キャリアの天井はあるが道は広がっている
放射線技師は医師の指示のもとで業務を行うため、独立・起業はしにくいです。
病院内のキャリアパスも「主任→係長→技師長」と一本道になりがちで、管理職のポストは限られています。



9年目で主任に昇進しましたが、その上は埋まっていて天井を感じました。
ただし、近年は病院以外のキャリアパスが広がっています。
- 医療機器メーカー(アプリケーションスペシャリスト)
- 放射線治療品質管理士としてのスペシャリスト路線
- 治験コーディネーター(CRC)
私の同僚にも、第1種放射線取扱主任者などの資格を評価され、大手メーカーへ転職した人がいました。
「病院で定年まで」以外の選択肢を知っておくだけで、キャリアの見え方はだいぶ変わってきます。
それでも17年続けられた3つの強み


ここまで「やめとけ」の理由を正直に検証してきました。
私自身は17年間この仕事を続け、辞めたいと思ったことは何度もあります。それでも続けられた理由をお伝えします。
コロナ禍でも賞与が出る安定感
年収が上がりにくい反面、下がることも少ないのが国家資格の強みです。
コロナ禍でも、給料が遅配されたり賞与がカットされたりしたことは一度もなかったです。
周囲を見ても、同僚の多くが住宅ローンを組んで家を建てていました。「総合病院の正職員」の信用力は大きかったです。



「派手さはないけど食いっぱぐれない」——家族がいる人ほど実感するはずです。
パートやアルバイトでも、平均時給は約2,770円(令和6年賃金構造基本統計調査)と一般職より高い水準です。
患者さんの回復を直接支える手応え
放射線技師が撮影した画像がなければ、医師は診断を始められない。
この事実は17年間ずっと感じていたことですが、放射線治療ではその手応えがもっと直接的でした。
忘れられない患者さんがいます。初回の治療時はベッドに寝たきりの状態で、ストレッチャーで治療室に運ばれてきました。
放射線治療は複数回に分けて照射を行いますが、回数を重ねるにつれて状態が目に見えて改善していったんです。
そして治療の終盤、その方は自分の足で歩いて治療室に入ってきました。あの光景は、何年経っても忘れられないです。
もちろん、すべての患者さんに劇的な効果が出るわけではないです。がんの種類や進行度によっては、効果が限定的なケースもあります。
それでも、自分の技術が患者さんの回復に直接つながっていると実感できる瞬間がある。この手応えが「続けてよかった」と思わせてくれました。 <!– 吹き出し:くろぶち –>



技師の腕の見せどころは「計画通りに、いかに精度高く照射を実施するか」です。
計画を立てるのは医師や物理士ですが、毎日患者さんの前に立ちミリ単位の精度で治療を実行するのは技師の仕事です。
職場を変えれば働き方も変わる
総合病院で働く中、私は系列のクリニックや健診車での仕事も経験しました。
そこで感じたのは、職場が変わるだけで働き方がまったく違うということです。



当直なし、時間外も少ない。総合病院の業務とは別世界でした。
業務内容が限定される分、得意分野を深掘りしやすいメリットもあります。実際に、得意分野で力を発揮して昇進した同僚もいました。
総合病院・クリニック・健診センター・企業——ライフステージに合わせて働き方を変えられるのは、国家資格ならではの強みです。
17年目に退職した私が伝えたい3つのこと


最後に、「辞めるか続けるか」を迷っている方へ。私自身の経験からお伝えしたいことがあります。
限界の前に上司へ相談する
私が17年目に退職を決めた理由は、家族の介護と忙しい業務の両立で体調が限界に近づいていたからです。
介護できるのは自分だけ。倒れるわけにはいかない。そう思って退職を決意しました。
ただ、一つだけ後悔していることがあります。
もっと早く上司に相談しておけばよかった。
私は体調を崩してから退職の相談をしたのですが、上司からは「時短勤務はどうか」と提案してもらったんです。
結果的に、退職前の3年間は時短勤務でムリなく働けました。体調を崩す前から相談していたら、もっと長く病院にいられたかもしれません。



環境を変える方法は「退職」だけではないですよ。早めに声を上げてみてください。
「職業」と「職場」の不満を分ける
これは、迷っているすべての放射線技師に伝えたいことです。
放射線技師という仕事自体が嫌なのか、今の病院の環境が嫌なのか。この2つは分けて考えてください。
不満の原因が「職場」にあるなら、職場を変えるだけで状況が大きく改善する可能性があります。



退職後に気づきましたが、17年間の経験は「つらかったこと」ではなく「財産」でした。
求人は焦らず日頃から見ておく
転職を考え始めたとき、多くの人は「辞めてから探そう」と思いがちです。
でも、在職中から情報を集めておく方が圧倒的に有利です。



良い求人はすぐには見つからないです。時間をかけた方が希望に合う求人に出会えます。
放射線技師の転職市場は求人数が限られていて、サイトごとに扱う求人も異なります。
「今すぐ辞めるわけじゃないけど、どんな求人があるか見ておく」くらいの温度感で、早めに転職サイトに登録しておくのがおすすめです。
まとめ|「知ったうえで選べば」後悔しない


「放射線技師はやめとけ」と言われる5つの理由を、17年の経験で検証してきました。
| 「やめとけ」の理由 | 17年の経験から見たリアル |
|---|---|
| 求人が少ない | 地域差あり 専門の転職サイトで選択肢は広がる |
| 年収が低い | 平均550万円は全職種より高い ただし昇給は緩やか |
| 体力的にきつい | 的を射ている ただし職場選びで大きく変わる |
| 被ばくが危険 | ほぼ誤解 17年間で問題になったことは一度もない |
| キャリアが限定的 | 病院以外の道も広がりつつある |
大切なのは、ネットの「やめとけ」を鵜呑みにしないこと。そして、自分の状況に照らして事実をもとに判断することです。
「辞めるか続けるか」の答えはすぐに出なくても構いません。まずは情報を集めて、選択肢を知ることが最初の一歩です。
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